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中札内村に残されたアイヌ伝説と昔話‼

幌尻岳のカムイトウ

『サツナイ川は十勝第四の支流で、その源は神湖(カムイトウ)で有るという。その上流源の神岳(幌尻岳)は十勝、様似、浦河 (?)の四場所にまたがっている山で、頂上には湖が一つあり、海豹(トド)、水豹(アザラシ)が住み、わかめも有るそうで、それは時々下流に流れてくるのでしれるのだという。湖水は東南風に水が増え、西北風では百日続くような雨続きでも水が増えないといわれている。こういう不思議ないわれの有る山で、古来この山の頂上まで登ったものはないという。それは昔、札内の者が一度、最近ではサツナイの乙名マウカアイヌが何日分かの食料を持って川筋に上がったが、大きな滝が有って、この傍の木にとりついて上がり出すと、一転にわかにかき曇り、山鳴りがし、地がゆれ、加えて猛烈な雨が降ってきたので、登頂を諦めて帰ってきた。その後も再三試みたが滝まで上がると必ず空が雲って雷鳴がするので、身体は震え足がどうしても進まなくなってしまうので断念した』とあり、これが反対側の浦河では
『頂上には一つの石のトノチセ(御殿-神の家?)があり、その後ろに湖が有ってそれらが見える所までは誰でも猟に行く。しかし谷を一つ隔てた所までで、そこから御殿を拝んで帰る。これは昔からそれ以上近づいてはいけないと言い伝えられているからだ。またこの山に上るときは、海に関係有る言葉を言うことを禁じられている。もしどうしても言わなければならないときは、変えて言うのだそうである。まず塩を灰、昆布を葡萄蔓、海を沼、船を櫂、鱈をイトウ、酒を水、鯨を息を吐く、アザラシを刺青、和人を小父さん(他にも有るが省略)というふうである。またこの山で捕れる鹿の毛が黒く、熊の毛のようだそうで、まことに不思議な話である。これについてサツナイ側の者は湖を見たことがなく、浦河の者の多くが早春の固雪の頃に登り、谷を隔てて拝んでくる。』※松浦武四郎・十勝日誌※十勝側からは見られないカムイトウだったようです。

幌尻岳の一般的な伝説の始まりは

『この山神の山でここは天界の一部であってそこには神様の園があり、日暮れになると魔神達が天上からも地上からも集まって来てブキブキと歌や踊りをし、夜中が過ぎると、善神が天上と地上から集まって来て、朝方まで楽しく遊ぶということであるが、ここの頂きに沼があって、この沼にはワカメや昆布が生え海の魚や海豹も住んでいて時々水の増したときに、その海草類が札内川に流れて来るという。それは昔海の神であるレプンカムイ(鯱)がカンナカムイに反抗したことがあったが、遂にカンナカムイに負けて、その償いとして海の魚介や海草をカンナカムイに献上して降参した。それで山の湖だけど海の魚がいるのだという。』※以下は松浦武四郎の十勝日誌とほぼ同じなので省略しました。話としてはまとまってはいるもどこか違和感があり、和人好みに脚色や創作を付加した可能性は否定できない。※工藤梅次郎・アイヌの民話・更科源蔵・アイヌ伝説集より。

もう一つの幌尻岳伝説

日高地方でも幌尻岳は信仰の山で十勝と同じように「山頂に湖」がある伝承があるほか、白熊伝説があるのでエリア外だが要約して紹介。『幌尻岳には白熊が棲んでいるが、その姿を見たとたんに突風が吹き、見た者は遙か彼方まで吹き飛ばされてしまいます。しかし絶対に怪我をすることはありません。人間の血で山が穢れるのを神がいやがるからです。この白熊の家来になりたがる者がおりますが、よほど品行方正な者でなくてはなり得ません。しかし運良く家来になりますと、子孫は白熊の加護で幸運に見舞われます。沙流川鵡川の流域でも、二、三の老人が白熊の家来にしてもらったとのことです』・更科源蔵・アイヌ伝説集より。※日高山系の幌尻岳のカールで遊んでいる野生の白い熊がテレビ放送されているのを見た事がありました。個体群としてアルビノの出る確率が他の地域個体群より高いのだと思われます。平成24年には西興部村でも白いヒクマが目撃されている。

札内水源の大鹿

『十勝川の支流札内川は、東風が吹けば雨が降らないのに川水が増水し、夏になれば川水が乾くので乾く(サツ)川(ナイ)と名付けたものである。古い云伝えによると、此川の水源に天にも轟くような大鹿の声がするので、アイヌ達は弓矢をもって山に分け入ったところ、日高アイヌもこの大鹿の猟のために登山して来ていたので、協力して山の頂に座っている大鹿を発見してこれを倒したが、分け前のことで争いが起こったので、相方の相談の結果鹿を両分する事にし十勝アイヌはその分けた半分を運搬するのに、数十人かかったが担ぐことが出来ず、仕方がなく札内川に入れて水の力で流しながら運ぼうとして札内川に入れたところあまり鹿が大きいため川水を堰き止めてしまい、一時川水が乾いたのでサツナイと名付けたという』工藤梅次郎・アイヌの民話・更科源蔵・アイヌ伝説集より。伝承者不詳で話の内容から脚色されている印象、参考にあげた日高山脈の大鹿が本来の伝承かもしれない。

日高山脈の大鹿

『染退川(シベチャリ川・現-静内川)の支流メナシベツの水源、十勝との境にの山奥に、昔大鹿が棲んでいた。或る時染退アイヌがメナシベツを遡って行くと、十勝の札内川を遡ってやはり大鹿を狙ってやってきたトカチアイヌと国境の嶺でであった。そこで双方が協力してやっとのことで大鹿をとることが出来たが、あまり大きな鹿だったので運ぶのに困って、国境の山の頂で鹿を胴切りにして二つにし、半分を十勝のサツナイの沢に、半分を日高のメナシベツの沢におとしたところ、その鹿のために沢がふさがって川下の川が涸れてしまった。それでこの沢のことをサツシビチャリ(乾く染退川)と云うようになった。』北海道庁編・北海道の口碑伝説

幌尻岳に関する伝承は日高側に多く残されていて十勝側に残されている伝説は少ないようですが、伝承の山やカムイと名のつく山は分水嶺となっている事が多く、山頂には湖が有り不思議な現象が起こるという伝説が道内には多いようです。

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